Out in the pasture under Phew tree
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2026/03/23
”ひとまず ふるい チョキを だしてきて、きこみました。”
(本文より)
手渡されたときには、この本についてお伝えしたくなるとは思っていませんでした。
紹介してもらった本がこんなにも自分と合って、ちょっとくやしいです。
あなたさまはトガリネズミをご存知ですか?
すいっと長めの鼻にちっちゃな目、名前に「ネズミ」とついていますが、実はモグラのなかまなのだそうです。
(六田晴洋さん『トガリネズミ ひみつのくらし(世界文化社)』より)
この本には、ちいさなトガリネズミが街で暮らす様子が描かれています。
家の中、たくさんの人の中、それぞれの姿ひとつひとつに、ちいさなトガリネズミの個性がにじんでとても美しく、やわらかく目に触れる心地が眠る前にぴったりです。
「おいしいごはんつくれた、やった」
「掃除とお洗濯、しっかりした」
「温かい牛乳を飲むときにしーんとなるの、落ち着く」
「時間から離れて本を読むひとときといったら、もう…」
「寒い日に熱めのお湯で顔を洗うと、生きてるって感じがする」
日常の中で「うん、うれしい」と実感したとき、こんなふうにわたしがこそっと教えてくれることがあります。
ちいさなトガリネズミを見ていて、このことをお話ししてみようと思いました。
「うん、うれしい」は生活のいろいろな隙間にひっそりと存在していて、ふとしたときに訪れることのできる「わたしだけの別荘」のようなものです。
少し一人になりたいとき、頭の中がおしゃべりカオスになっているときのひと休みの場所でもあります。
美しくてすばらしいものがこの世界にはたくさんです。
遠くを望遠鏡でのぞいたときに見えるそれはとてもすてきで、でも自分とはちがっていて…いいな、と思います。
わたしのこのきもちは強力です。
ふわっと容易に腕を取られ、そのまま引っ張り回されます。
あまりの勢いにわたしは白目で、なびく旗のようにされるがままです。
そうしておしまいにはいつもボサボサのよれよれで、くしゃくしゃの「なんだかかなしい」と一緒にぽつんとなります。
相変わらずこの「羨ましい」にとっ捕まっていますが、「わたしは今、引っ張り回されている」と周りの情景に目を向けることができるようになってきたのは、「うん、うれしい」のおかげなのかもしれません。
「大丈夫、ここにあるよ」なんとなく、そう言われているように感じるのです。
すぐそばで見つける自分の温もりを、両手で丁寧に掬うように生きるちいさなトガリネズミの、たまらなく愛おしいその背中が教えてくれたことは、とても大きなものでした。
その心がこれから先、「うん、うれしい」と共に過ごす時間の中で培われていく、そうだといいなと思っています。
あなたさまにも「うん、うれしい」はありますか?
それはどういうものでしょう?
知りたいです。
Kokage
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【ちいさなトガリネズミ】
みやこしあきこ
発行◎偕成社
ISBN 978-4-03-439580-6